Leica M10-P “Reporter”
雷がおさまったのは、もうすっかり日が暮れて暗くなってからだった。
ベランダを叩きつける雨の音と雷、窓を揺らすほどの強い風に外出の機会を奪われてしまった。
外出といっても、まあ酒の肴を買いに行く程度のことなのだけれど…。
大通りに沿って設けられた少し広めの歩道に一台の自転車が転がっていた。
先ほどまでの強風に押し倒されてしまったのだろうか。
それにしても他の自転車は整然と並んで停められていたのが不思議だった。
きれいに並べられた自転車の列から、この一台だけが離れた場所でひっくり返り、オレンジ色の街灯に照らされていた。
何があったのか…。
集団生活をする動物のように群れから離れたものは、どこかで酷い目に遭おうと誰も助けてくれなければ、誰にも見向きもされない。
そんな雰囲気が漂っていた。
この自転車も、きっとこのまま忘れ去られてゆくのだろう…。