Leica M10-P “Reporter”
厚い雲の隙間から少しだけ空が見えた。
厚く黒い雲の向こう側にも何層かの雲が重なり合うようにして空を閉ざしていた。
そんな幾重にも重なる雲のほんのちょっとした隙をつくかのように薄いブルーの空が顔をのぞかせていたのだけれど、それは注意して見つめなければ見過ごしてしまうほどの淡いブルーだった。
ほんの一瞬空を見上げただけだと、きっと黒い雲と白い雲が織りなすモノトーンの一部として見過ごしてしまったかもしれない。
人間の感覚なんていい加減なものだ。
こうして写真として残しておいて、あとから見返すと「ああ、青空が見えていたんだな」と、思うくらいのきっとそんな程度の感覚しかないのだ。
それがいいことなのか、悪いことなのか…。
写真を見て「ああ、こんな感じだったよな」と思うこともあれば、「あれ、こんな感じだった?」と思うこともあるだろう。
そのどちらが正しいのかなんて、きっと、どうでもいいことだろう。
薄れゆく人々の記憶の中でも、写真だけは、いつもその時の記憶を残し続ける。
それが正しいのか、間違っているのかなんて関係なく…。