Leica M10-P “Reporter”
部屋の外から強い光が差し込んでくるのがわかった。
ベランダに出てみると、向かいのマンションの窓ガラスに夕陽があたり、そこで反射した光が猛烈な勢いでこちらに向かっていた。
突如として“光る塔”が、そこに現れたかのような錯覚を覚えた。
これまでもこの季節になると、こんな風に上手い角度で反射した光が、こちらを目指してきていただろうか…。
理由はすぐにわかった。
昨年のこの時期には、まだ目の前に違う建物があったはずだ。
その建物が取り壊され、今は新しい建物が建設される途中で、低い部分に基礎工事がされている最中だった。
木々の少ない街中で暮らしていると自然の変化に気づくことは少ないが、それでもこうして建物が取り壊されたり、新しく建築されたりすることによって光の当たり方や風の吹き方が変わったことに気付かされることがある。
すぐ目の前で行われている工事が進み建物の背丈が伸びてくれば、きっとその“光る塔”からの強烈な光線は、ここへは届かなくなるだろう。
たぶん今だけ楽しめる光景だ。
季節の変化を楽しむように、こうした街の変化を楽しむのも悪くないだろう…。