それぞれの時間

それぞれの時間

Leica M10-P “Reporter”

 

普段なら観光客で賑わうはずの祇園・花見小路は、この日も人影はまばらだった。

着物姿の小さな女の子が母親らしき女性に手を引かれて歩いていた。

草履を履いているからなのか、どこか歩きにくそうに壁伝いに手を添えながら、ゆっくりと歩を進めていた。

そのゆっくりとしたペースに合わせるように、手を繋いだ母親らしき女性も子供の一つひとつの動きを待ちながら少しづつだが進んでいた。

どこかに何かをするためというような明確な目的があるわけではなかったのだろう。

ゆっくりとしか進んでくれない我が子と散歩しながら、二人だけの時間を楽しんでいるようにも見えた。

 

 

そんな二人の後ろ姿を見送ったのち、河原町の賑やかな通りまで歩くと10名近くの警察官が歩道に立っていた。

なにかの取り締まりなのか、はたまた何かしらの情報に基づく警戒活動なのか、目的はわからなかったけれど、カメラを向けるこちらに向かって鋭い視線を送ってくる警官もいた。

特にやましいことはないけれど、できればこうした方たちとは関わり合いたくない。

「ご苦労様です」

そう、心の中でつぶやいて、その場を離れた。

治安がいいと言われる日本でも、犯罪が全くないわけではない。

こうした警察官の存在が何かの抑止力になることもあるのだろう。

観光地としての顔だけでなく、その場所で生活している多くの方たちの“暮らし”もある。

それぞれの人に、それぞれの時間が流れている。

 

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