Leica M10-P “Reporter”
新しい高層マンションに挟まれて一軒の木造住宅が建っていた。
いつ頃建てられたものなのか正確にはわからないけれど、ここ十数年の住宅によくあるデザインではなく、それらよりもはるか昔、きっと昭和の時代まで遡らないとみることができないような建物だ。
もしかしたら戦前から、そこにあるものかもしれない。
きっと周りにも同じような時代に建てられたものが並んでいたのだろうけど、そのほとんどが今は取り壊され、高層マンションやビルに姿を変えている。
戦争を経験している日本では、空襲で焼かれ、当時の姿をまったくとどめていない街も多い。
もちろん戦争に関係なく、時代とともに街の区画整理や再開発などによって取り壊された建物も多いだろう。
76年前の今日、広島に世界で初めて原爆が投下された。
一発の原子爆弾が広島の街を焼き尽くし、そこで暮らす多くの人たちの命を奪った。
残された人々の人生も破壊した。
日本が全世界に、そして後世に語り継がねばならない悲しい歴史だ。
そんな日にたまたま目にした木造住宅。
大都会の街中で高層ビルに囲まれながら、今なおこうして当時の面影をそのまま残すその姿が、通り過ぎる人々に向かって何かを語りかけているように見えた。