Leica M10-P “Reporter”
夕食というには少しばかり早い時間に、近所の食堂へ出かけた。
会社勤めのサラリーマンが会社を引ける時間になれば、きっとそれなりに混み合うと考えたからだ。
案の定、夕食には早すぎるようでテーブル席に人組、そしてカウンターに一人、先客がいるだけだった。
どちらも食事を取るというよりは、ビール片手に暑気払いといった風情に見えた。
感染症の恐怖は今なおあるものの、感染症対策の一環として飲食店が役所から求められる営業自粛やアルコール類の提供禁止といった理不尽で一方的な措置から、少しでも飲食店側の手助けになればという思いで、最近は少しずつだけれど、こうして外食をするように心がけている。
何品かの料理とともに冷えたビールを流し込み、早々に店を後にした。
店の反対側の歩道には、フードデリバリーのための赤いバイクが停められていた。
そのバイクを切り取ろうとカメラを構えシャッターを押した瞬間、赤い車が横切っていった。
スローシャッターを選択していたせいで、赤い車は、その本来の姿をとどめず、どこか他の世界にワープしていくようだ。
夕暮れ時の柔らかな光と暑かった昼間の熱気をそのまま残した空気とが混ざり合い、なにもかもがその場からとろけて消え去っていくように思えた。