Leica Q2 “Reporter”
近所の公園を散歩がてら歩いていると、一人の青年が歩み寄ってきた。
申し訳なさそうに腰をかがめながら持っていたiPhoneをこちらへと差し出す。
「写真撮ってもらえますか」
その青年の連れだろう、すぐ後ろには晴れ着姿の女性が、こちらを向いて頭をぺこりと下げていた。
この公園の中ではフォトスポットとして有名な場所だった。
周りには他にも彼らのようなカップルやグループが数組いて、思い思いの格好で記念撮影をしていた。
そうか、成人式なんだな。
自分の成人式は、もう何年前になるのだろう…。
そんなことを考えながら、青年が差し出したiPhoneを受け取る。
コロナ禍の昨今、こうして他人のものを触ったり、また自分が触ったものを相手に返すのは、少しばかり抵抗があったが、彼女、彼らにとっては一生で一度の大事な“晴れの日”だ。
こうしてたまたまここを通りかかったのも何かの縁だろう…そう思い引き受けることにした。
こうした場合、相手から「これ押すだけでいいので…」とカメラを渡されることが多い。
向こうとしては、あまり多くを見ず知らずの他人にお願いするのは申し訳ないという思いで、そうした言葉が口をついて出てくるのであろうことは重々承知している。
相手がこちらの素性を知らないのは当然として、それでも長年写真というものに関わってきたこちらからすると、引き受けた以上「押すだけでいい」などということはあり得ない。
昔からこうした場合、一緒にいた友人、知人たちから「おせっかい」だと揶揄されることがあった。
自分でもそう思う(笑)
でもね、どうせならいい写真撮ってあげたいじゃん。
こうしてこの日も、まずは本人たちが最初に決めた場所で並んだままを撮ってあげたのち、立ち位置やポーズ、画角も勝手に変えて何枚も撮ってあげましたとさ…。
いやー、もう、本当におせっかいなおじさんだ(笑)
青年にiPhoneを返し撮影した写真を確認するように促すと、一緒に覗き込んだ彼女がすごくうれしそうな顔をしてくれたように見えた。
もちろん、大好きな彼氏と一緒に写っている自分の姿を見て喜んだだけなのかもしれない。
それでも、自分が撮った写真を見て喜んでもらえるのは、撮影した側としてもうれしいよね。
さて、今年はあと何回、“おせっかいなおじさん”ができるかな…(笑)