雨あがる

雨あがる

Leica M10-P “Reporter”

 

所用のために訪れた場所に着いた時、遠くで雷鳴が鳴り響き、真っ黒な雲に覆われた空は今にも泣き出しそうな雰囲気だった。

車を降りて目的の建物まで小走りで向かっている最中に、やはり雨が一気に降り出した。

まさか自分が、こんな場所に…。

まさか自分の人生で、こんなところにお世話になるなんて…。

建物の入り口をくぐった時にいろんな思いが去来した。

そんな自分の思いを映し出すかのように、外は土砂降りだ。

もちろん法を犯したり、非常識な行いをしているわけではなく、何も悪いことをしているわけではないのだから、堂々としていればいいだけの話だ。

ただ、人生で初めての場所で、これからどんなことが起こるのか、さっぱり見当がつかなかったせいで、知らず知らずのうちに少し不安になっていたのかもしれない。

しかし、手続きは思いのほか簡単だった。

ここに来るまでに自分なりに調べてきて、これはなかなか面倒だぞ! と覚悟していたことも、なんのことはない。

対応してくれた担当者が丁寧に説明してくれ、こちらの質問にも親身になって答えてくれた。

こんなものか…。

ここに着いた時に、不安を感じていた自分が、少しだけ恥ずかしくなった。

これまでの人生で体験してきた辛いとか、不安に思ったことに比べれば、どうってことなかった。

なんだか目の前がパアッと明るくなった気がした。

すべての手続きを終えて、建物を出る頃には、土砂降りだった雨も上がり、頭上には青空が広がろうとしていた。

また明日から元気に楽しく過ごせそうだ。

 

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