Leica M10-P “Reporter”
黒い雲が垂れ込めて、今にも泣き出しそうなどんよりとした空が広がっていた。
前日までの強烈な日差しと青空のセットは、どこか遠くにいってしまったようだ。
それでも、ここ数日と変わらない熱気が体にまとわりついてきた。
曇っているからとタカをくくって外出したことを後悔した。
歩き出してからすぐに、額を汗が伝ってきた。
持っていたタオルで額から顔へと流れてきた汗を拭いながら足を止めた。
たまたま立ち止まった頭上には、電柱から伸びた電線が横に向かって数本走り、それを貫くように螺旋状にうねった電線が縦に伸びていた。
どこかで見たような気がした。
そうだ、五線譜だ。
楽譜を見ただけで、どんな音楽かわかるほどの能力は、残念ながら持ち合わせていない。
たとえそんな能力を持っていたとしても、今、自分の頭上に広がる五線譜からは、なんの音楽も思い浮かばないだろう。
とにかく暑すぎて悠長に音楽などを思い浮かべている余裕なんてなかった。
喉が渇いた。
今はとにかく涼しい場所でキンキンに冷えたビールをあおりながら、熱った体を冷ましたい。
突然、そんな思いが頭をよぎった。
自己防衛本能が働いたのかもしれない。
そうだ、ビールを飲みに行こう。
こんな暑い日はビールにかぎる!
それにしても、この暑さ、この夏はいつまで続くのだろうか…。