Leica M10-P “Reporter”
午前中から始めた作業を終えて、窓の外に目をやると雨は上がっていた。
といっても、空はあいかわらず、今すぐにでも泣き出しそうな気配を放っていた。
せっかくだからとカメラ片手に外に出てみた。
学校を終えた近所の子供たちが数人ずつのグループが「こんにちわぁー」と元気にあいさつしながら自宅前の道路を帰って行く。
「おかえり」
そう返事を返しながら見送った後、道路にしゃがみ込んで自宅の庭に立つ樹木を撮影していると、後ろから何やら視線を感じた。
先ほど見送ったグループとは違う女の子だけのグループが、「あの人何をやっているのだろう」と言った感じで、じっとこちらを見つめていた。
そのうちの一人が「きょうは、あたしもこっちから帰る」と、自宅前の分かれ道を曲がらずに他の子達と同じ道を進んでいこうとした。
もしかしたら彼女たちからすれば不審者のように見えているのかもしれない。
それはそうだ、きっと自分たちの父親なら、こんな平日の昼間、自分たちの下校時間に、Tシャツ短パン姿で家の前に座り込んでいたりはしないだろう。
彼女たちが、そんなふうに思ったところで不思議はない。
みんなランドセルに交通安全の標語が書かれた黄色いカバーをしている。
今年小学校に上がったばかりの1年生なのだろう。
通い始めたばかりの学校で教えられているであろう防犯意識がきちんと身についていることを誉めてあげるべきだ。
なんとなく気まづさはあったけれど、きちんと説明してあげたほうが彼女たちの今後にもいいような気がした。
言い訳がましく聞こえたかもしれないが、「いまね、これで写真撮ってるんだよ」と手に持っていたライカを見せてあげた。
すると一人が「ふ〜ん、そんなので写真撮れるんだぁ」、そうつぶやいて、みんな一緒になって帰っていった。
「しまった」
逆効果だった…。
彼女たちの世代は、写真はカメラで撮るものではなくスマートフォンで撮るものなのだ。
ましてやレンジファインダー機の形など、きっと彼女たちが知っているであろうカメラの形ではないのだ。
仕方ないね…。
それにしても、うちは子供たちが登下校の際に、それこそ本当に不審者に会ったり、何か困ったことがあった時には駆け込める「子ども110番」みたいな家に指定されていたはずなのだけどね(笑)