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到福

Leica M10-P “Reporter”

 

所用で出かけた帰り道にある近所の中華料理店で、少し遅めの昼食をとることにした。

コロナ禍の昨今、できるだけ外食をしないように心がけていたせいで、この店を利用することはあってもテイクアウトばかりだったのだけれど、この日はすでに午後3時になろうとしていたせいもあってか、店内に客の姿がなかったので久しぶりに出来立ての料理を食べて帰ろうという気分になった。

いつ以来か思い出せないくらい久しぶりにテーブルについて注文を済ませると、ふと見上げた壁にかけられた文字に目が止まった。

「福」の字が逆さまになっている、中華料理店ではよく見かけるものだ。

中国語で逆さまになった「福」が、「福がやってくる」と同じ意味になるということで、客を招くおまじないのようなものとして店舗に飾られるようだ。

どこででも見かけるものだから「目が慣れていた」と言えばいいのだろうか、これまでそれほど気にとめることもなかったのだけれど、なぜか今日はこの逆さまになった「福」が気になった。

飲食店の苦境を伝え聞く中で、自分なりに応援できる範囲で応援しようと、やってきたのがテイクアウトというスタイルでの飲食だった。

でも、やはり店舗を構えている以上、店内がお客さんで賑わっていなければ、商売として本来の意味がないのかもしれない。

こんな時だからこそ神頼みだったり、おまじないのようなものにすがりたくなるのが人情だ。

普段は気にもとめない壁の文字が、今はなんだか、すごく意味を持つもののような気がした。

 

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