Leica M10-P “Reporter”
長いドライブの末、辿り着いたのは、どっぷり日が暮れた小樽運河だった。
ここを目指して走ってきたわけではないのだけれど、たまたますぐ横の道路を走っていたようでライトアップされた建物が目に入った。
せっかくだからと車を停めて橋から運河横の遊歩道へと続く場所まできたところで自分の場違いさ加減に気づいた。
周りはカップルだらけ、または女子旅と思われるグループがほとんどで、自分のような一人旅のおっさんは他にいなかった。
運河には遊覧船のような小さな船も浮かんでいたが、その船上もカップルだらけだ。
ここにいるほとんどすべてが、この夜景を一眼見ようと訪れたのだろう。
「なぜ、みんな夜景に惹かれるのか?」
まあ自分もたまたま通りがかっただけとはいえ、その光を目にして釣られるように車を降りてきたわけなのだけれど…。
ライトアップ自体が人の手によって作られた人工物でしかないのに、なぜ人はそれに吸い寄せられるのか?
クリスマスのイルミネーションもそうだが、わざわざ集客のために作られた自然界にはもともと存在しない人口の光だとわかっていても、人はその幻想的な景色、雰囲気を求めて集まってくる。
「非日常の世界に自ら迷い込むことで、現実世界での色々なものを忘れ去ろうとしている」
もし今、自分が問いかけられたら、きっとそう答えるだろう…。