Leica M10-P “Reporter”
信号待ちをしている間に観光名所・札幌時計台を撮影していると、すぐ隣を若い女性が通り過ぎて行った。
彼女の格好はまさにモノトーン。
黒い衣装に身を包み、ミニスカートからすらりと伸びた白い足だけが眩しく光っていた。
街はすでに秋の装いといった格好の人が多い中、この日の気温は20℃を超えていたので、彼女の姿も特におかしくはないだろう。
札幌市内を歩き回る中、街のあちらこちらで進む再開発と思われる工事を見かけた。
すすきの交差点に長く立ち続け百貨店などが入っていたビルも取り壊されていた。
その現場横の歩道を黒い日傘をさした女性が足早に通り過ぎてゆく。
日差しはまだ強い。
すすきの交差点からすぐ近く狸小路との間のビルの屋上の観覧車が回っていた。
回っているということは利用客もいるのだろう。
通常営業ができないお店や施設が多い中、回り続ける観覧車を見上げると、ちょうど向こう側から太陽が照りつけていた。
なんだか希望の光が差し込んでいるように見えなくもないな…。
また違った場所でもビルが取り壊され、新しいビルが建てられようとしていた。
歩行者を守るために建てられた防護壁の柱と柱の間からピンスポットのように差し込む光の中心に、黄色い服を着た金髪の女性がひょっこり現れたように見えた。
その姿は白いキャンバスに絵の具とともに落とされる筆のようにも見える。
短い秋があっという間に通り過ぎ、すぐに長い冬が始まるこの街も、今はまだ多くの色であふれている。
横断歩道の途中でテレビ塔を撮影していると、高齢の女性が前を横切った。
帽子をまぶかに被り、コートを着て首にはマフラーまで巻かれている。
長年この街で暮らすかたなのだろう。
彼女にとってこの季節は、もうすでに冬なのかもしれない。
いや、彼女だけでなく、もしかしたらこの街の多くの人が、あちらこちらで行われている建設工事、そしてコロナ禍の街の現状に、もうすでに冬の到来を感じているのかもしれない…。