終着駅

終着駅

Leica M10-P “Reporter”

 

北海道一周中、昔少し縁のあった街にさしかかった。

その街の駅は、留萌本線の終着駅だった。

高倉健主演の映画「駅」の舞台にもなったその駅、数年前に廃線となり、今は駅舎と数キロほどの線路が残されて街の観光名所となっていた。

駅舎と線路の残ったホームを見て回りながら少しだけ写真を撮った。

駅舎を出ると、小さな子供をそれぞれ抱いた若い夫婦とすれ違った。

ここを初めて訪れた二十数年前の自分も、彼らと同じような状況だったかもしれない。

彼らの人生は、まだまだこれからだ。

 

 

北を目指して走っていると、この日の目的地の数十キロ手前で夕暮れ時を迎えた。

ちょうどそこには数十基の風車が並んでいた。

「ここでのんびりしていると、宿に着く頃には真っ暗になってしまうな」

一瞬そう思ったが、急ぐ旅ではない。

すぐ近くの駐車場に車を停め、カメラを手にしばらく歩いた。

運転しているだけではわからなかっとことに気づく。

道路を横切るように歩いてみると、路面には幾重もの小さな轍が折り重なるようにして、ちょうどタイヤ一つ分くらいの大きな轍になっていることに気付かされる。

行き交う多くの車が少しづつだが確実に残して行ったものだ。

道路の横では風車が、誰に言われるでもなく、ゆっくりとだが規則的に回り続けていた。

これもまた人生。

 

 

一通り撮影したところで車を走らせることにした。

もう、すっかり日が暮れてしまった。

助手席には誰もいない一人旅だ。

助手席の向こうには夕焼けに染まった空に映し出されるように利尻島が浮かんでいた。

路肩に車を停め、助手席側のウィンドーを下ろし車の中からカメラを構えると、ちょうどそこには数本だけ高く伸びたススキが風に吹かれて揺れていた。

風に吹かれるままに…。

こういう人生でも、よかったのかな。

まだまだ旅の途中だ…。

 

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