Leica M10-P “Reporter”
日本最北端の地にいる。
連休の中日となったこの日は、発出されている緊急事態宣言など、どこ吹く風と行った雰囲気で多くの観光客が「日本最北端の地」と書かれた看板と一緒に記念写真を撮るのに興じていた。
すぐ横に立つ間宮林蔵の銅像になど目もくれず、「日本最北端の地」の“看板”を目指すものの方が多かったように感じた。
そう、彼らにとっては、この場所がどうして最北端の地になったのかなど、全く関係ないのだ。
じっとサハリンの方角を見つめ立ち続ける間宮林蔵という人物がどのような人で、どういった実績を残しているかなど、きっとここにいるほとんどの人は知らないのだろう…。
「最果ての地」という言葉は、もう今の日本には必要ないのかもしれない。
間宮林蔵が江戸幕府の命を受け、この地にやってきた時代には、ここは間違いなく「最果ての地」だっただろう。
でも今は、飛行機でひとっ飛びだ。
現代に生きる人々が、先人たちの苦労を同じように体験する必要はないだろう。
でも、もしその時代に生きた人にほんの少しでも寄り添おうとする気持ちがあれば、旅先で見かける偉人と言われる人たちの銅像や資料館などは、もしかしたら今まで以上にありがたみが増すかもしれない。
そんなこと知っていてなんの得になる? という声も聞こえてきそうだが、それを知っていたからこそ、さらに充実した旅になっていることに気づいていないのだろう。
その場所までわざわざやってきた自分たちの労力自体が、有意義な使い方ができたと満足度や幸福度も増すのではないだろうか…。
この写真を撮っている横で「間宮林蔵って、なにした人?」と若い女性が連れの男性に聞いていた。
すると男性は「お前知らないの!? 世界地図作った人だよ」とドヤ顔で答えていた。
思わず吹き出しそうになったが、まあ、当たらずも遠からずということで、これはこれでいいのかな…。
いまは、この男性よりも、ちょっとだけだが知識が備わるように教育を受ける機会を与えてくれた両親に感謝するべきなのかもしれないな。