Leica M10-P “Reporter”
空港の搭乗口で搭乗開始を待っていた。
今年最後の空路での旅だ。
ガラス張りのロビーからは、一つ下のフロアが見下ろせた。
到着便の乗客がゲートを抜けてさらに一つ下の到着ロビーに出て行くためのエスカレーターが見えた。
長い通路を母親らしき女性に手を引かれた小さな男の子が、窓の向こうに見える飛行機を名残惜しそうに見つめながら歩いてくる。
エスカレーターの手前で、突然、女性が男の子の両脇に手を差し込むような形で、ひょいと抱き上げて降りて行った。
まだ小さい彼には、このエスカレーターに自分の足で歩いて乗ることが躊躇われるのかもしれない。
今は親に連れられて旅する彼も、これからもっともっと大きくなり、自分の足で、旅することができるようになるだろう。
そして独り立ちして、たった一人で旅する時に、またこの空港を訪れる日が、いつかやって来るだろう。
彼の旅立ちのときに、今日のこの光景が、母親との楽しかった記憶として思い出されるかもしれない。
見ず知らずの他人だけれど、彼の楽しかった思い出の一瞬を残せてあげられたらいいな…。
そんなことを考えていると、搭乗開始のアナウンスが流れた。
今は、私が旅立ちのときだ。